シラバス

専門科目群/Social Issues(社会課題)領域

科目名 頻発する災害に市民はいかに向き合うべきか~災害現象への理解と基本的な備え~
講師名 早稲田大学名誉教授 
浦野正樹
学期 冬学期
曜日 火曜日
時間 14時45分~16時15分
日程 1月10日、1月17日、1月24日、2月7日、2月14日、2月21日、2月28日、3月7日(補講日)

講義概要

この講義の目的は、頻発する災害に対してわれわれ市民がいかに対応していくかを考えるための基礎的な知識を学び、それに備えるための基本的な理解や心構えを築いていくことにあります。現代は、災害の種類も多様で、われわれは急激で甚大な規模で起こる地震や津波、繰り返し起こり被害規模も多様な台風や豪雨災害などの自然災害をはじめ、何らかの人為的な要素が大きい原子力事故に伴って起こる災害やパンデミックなどの人為災害を経験しております。過去の災害の知見を手がかりに、そうした現代社会において起こる災害の特質を探り、日常生活の営みと緊急的な対応を迫る災害との関係を捉えていきます。阪神淡路大震災や東日本大震災などの過去の災害事例から、災害過程の詳細な描写をするとともに、大都市圏域に潜むリスクと地方過疎圏に根付いているリスクの実相を身近なものとして把握し、さらに、復興に向けての取り組みや日常的な防災への備えへの知見を導き出すことにしたいと思います。

受講を通して得られるもの

1.頻発する災害に対する市民としての心構えや基礎的な理解を深めること
2.災害の多様な種類やリスクの内容についての理解を深めること
3.健全で持続可能な地域社会に向けて、自律的に考え行動する態度を身に着けること
4.過去の災害における対応や課題、復興に向けての取り組みなどを学ぶこと

受講の際の注意事項

受講前に必要となる知識・準備 不要
グループワーク なし
課題 あり(授業中に指示する)

各回の講義予定

テーマ
概要
第1回テーマ:講義全体のイントロダクション~災害を捉える際の基本的枠組
災害現象とはどのようなものか。災害理解の前提条件、災害を捉える際の枠組など。
第2回テーマ:自然災害と人為災害~災害の多様な種類とそれへの備えとは?
急激で甚大な規模で起こる自然災害、比較的緩やかに進行していく災害事象、そして原子力災害やパンデミックなどの人為災害など、災害にも多様な種類があること。そして、いずれの災害事象にも、常に人為的、政策的な影響が強く現れることを考察します。
第3回テーマ:大都市圏域と地方過疎圏域での災害リスクの様相・実相
阪神淡路大震災と東日本大震災の事例をもとに災害過程の詳細な描写を行い、大都市圏域に潜むリスクと地方過疎圏に根付いているリスクを対照的に描き、リスクの実相を身近なものとして把握する。さらに、復興に向けての取り組みや日常的な防災への備えについて考察します。
第4回テーマ:日本における災害の歴史(1)
日本では、どこに居ても何らかの災害に見舞われるリスクをもつ。その点では、リスクと常に隣り合わせの状態で生きていくことが常態である。第4回と第5回では、具体的事例の紹介を通じて、多様なるリスクの描写と、それぞれの災害で浮き彫りになった問題や展開過程の理解(~とくに防災に役立つ知見という観点から)を進めていく。いろいろな種類の災害とそれらへのリスクに対してどう向き合っていくべきか?日常生活における脆弱性に向き合い、それらの問題解決と災害局面の課題とを結びつけながら、日常生活の視点から災害対策を考え練り上げていく。
第5回テーマ:日本における災害の歴史(2)
第4回の続き。内容は第4回参照。
第6回テーマ:防災に関する知識や技法/基本的考え方(1)
災害研究に関わる書籍や映像資料、防災関連website等の教材を紹介しながら、防災に関する知識や技法をさらに学んでいく方法について解説を加えていきます。
第7回テーマ:防災に関する知識や技法/基本的考え方(2)
図上演習やタイムライン等の考え方を紹介することにより、実践的に役立ちそうな防災知識をさらに習得できるような情報を提供する機会をつくる。

講師紹介

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浦野 正樹
文学学術院名誉教授、日本都市学会会長、早稲田大学地域社会と危機管理研究所顧問

文学学術院名誉教授。1950年東京都生まれ。1973年早稲田大学政治経済学部卒業。1981年早稲田大学文学研究科修了。財団法人未来工学研究所研究員、早稲田大学文学部助教授、教授を経て、文学学術院教授。学内では文学学術院長などの役職を歴任。学外では、地域社会学会会長、社会学系コンソーシアム理事長、日本社会学会理事(防災学術連携体担当)などを歴任し、現在、日本都市学会会長、震災問題研究ネットワーク代表。共編著に『阪神・淡路大震災の社会学(第1~3巻)』昭和堂、『復興コミュニティ論入門(シリーズ災害と社会)』弘文堂、『災害に強い社会をつくるために―科学者の役割・大学の使命』早稲田大学出版部など。