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LRCサポーター 岡田武史さんの記念講演ハイライトを公開

10月16日に開催したLRC開校説明会では、元サッカー日本代表監督で本学校友の岡田武史さんより「58歳からの挑戦」と題し、記念講演をしていただきました。岡田さんはLRCの理念に賛同してくださり、漫画家の弘兼憲史さん、タレントで本学大学院人間科学研究科博士後期課程学生のいとうまい子さんとともにLRCのサポーター(メッセージ等はこちら)としてご協力いただいております。このページでは当日の岡田さんの講演内容をハイライトでお届けします。

-里山のスタジアムを、社会を変えるきっかけに。岡田武史さんを突き動かした、壮大な夢

岡田武史さん

株式会社今治.夢スポーツ 代表取締役会長、FC今治オーナー。元サッカー日本代表選手。平成2年に現役引退後、指導者となる。平成19年12月には日本代表チーム監督に就任し、チームを2010 FIFAワールドカップ 南アフリカ大会ベスト16へ導く。令和元年日本サッカー殿堂入り。本学校友(昭和55年政治経済学部卒)。

教育現場にかける思いが経営者への転身を後押しした

サッカー選手として活躍したのち指導者となり、数多くの選手を育てた岡田武史さん。およそ7年前に指導者の立場を退き、「株式会社今治.夢スポーツ」の経営業務に携わるようになりました。指導者として豊富な経験をもちながら、会社経営者に転身した理由は、多くの人が関心を抱くところ。講演の冒頭、岡田さんは指導にまつわる経験談を交えつつ、経営者の立場を選んだ理由を語りました。

「サッカーはスピード感のあるスポーツです。野球と違い、監督が選手にサインを出す余裕もないため、選手は自ら判断して戦わなくてはいけません。しかし日本の選手は、主体的に動くのが苦手な傾向があります。なかには試合のハーフタイムに『監督、この後はどう動いたらいいですか』と指示を仰ぐ選手もいました」

こう日本の選手に見受けられがちな特性を挙げた岡田さん。続けて、こうした特性が生まれる原因は、日本ならではの教育にあると話しました。

「日本の教育現場には、自由を重んじる風潮があります。子どもの判断力を養うため、自由を与えるという考えが主流です。しかし自由な環境では、自由な発想は生まれないのではないでしょうか。なにか制約があるからこそ、それを発奮材料に新しい発想や意見が生まれるのでは、と私は考えています」

岡田さんが教育に求めるものは、ものごとを学ぶ基本的な姿勢である「守破離(しゅはり)」。「守」は、師の教えや型、技を守って身につける段階。「破」は、ほかの教えなどを取り入れ、心技を発展させる段階。そして「離」は、これまでの教えから離れ、独自のものを生み出し確立する段階を指します。

「長い時間がかかったとしても、この『守破離』を、教える現場で実践したいと思いました」と話す岡田さん。そう考えた時に頭に浮かんだのは、学生時代のある先輩の存在だったといいます。愛媛県今治市在住の同氏は、四国サッカーリーグに属するチームを所有していたそう。同氏に「守破離」を実践するアイディアを伝えたことをきっかけに、岡田さんはチームのオーナーに就任することに。同時に、会社としてチームを運営するため、代表取締役にも就任する運びとなったそうです。

新型コロナの流行をきっかけに“目に見えない資本”の価値が増した

こうして立ち上がった「株式会社今治.夢スポーツ」。しかし、軌道にのるまでは、怒涛の日々が続いたのだそう。

「会社を立ち上げた当初、経営とはこんなに大変なものなのかと、心底驚きましたね。夜な夜な仲間たちと理想の会社像や将来のプランを話し合い、懸命に働いたことで、どうにか会社を持続させることができました」

先輩経営者から、経営に関するアドバイスを受けるシーンも多々あったといいます。アドバイスを受けるなかで、岡田さんがもっとも重視するようになったのは、自社の企業理念を確かなものにすることでした。「株式会社今治.夢スポーツ」が掲げる「次世代のため、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会創りに貢献する」という企業理念には、岡田さんの「信頼や共感といった“目に見えない資本”にお金をかける社会こそ、理想の社会。そうでない社会は、必ず行き詰まる」という思いが込められています。

「株式会社今治.夢スポーツ」の理念や企業姿勢、岡田さんの思いは、多くの人の心をとらえたよう。岡田さんは、近年の印象的なエピソードをこう明かしました。「昨年流行し始めた新型コロナは、サッカー業界にも大きな打撃を与えました。しかし、そうした状況にありながら、うちのサッカーチームは黒字を維持し続けています。スポンサー企業が『コロナ禍で弊社も苦しいが、御社への支援はやめない』と協賛金を出し続けてくださったことが、その要因の一つです」

“目に見えない資本”の尊さに、誰もが気づき始めている。新型コロナの流行が際立たせたのは、“目に見えない資本”の大切さだと、岡田さんは続けました。

この言葉の裏づけとなるのが、今年11月に今治市で着工される「里山スタジアム」のエピソード。この新スタジアムを建設するためには、およそ40億円という莫大な資金がかかるのだそう。当初、資金を調達するのは無謀だともいわれましたが、時代の風潮に後押しされるかたちで、建設に必要な資金が集まったといいます。

大きな夢と希望を秘めた「里山スタジアム」

「『里山スタジアム』をきっかけに、地域を元気にしたいです。『里山スタジアム』を複合型のスマートスタジアムにし、1年365日人が集まるような仕掛けを作ることで、地域が元気になると考えています」と、岡田さん。例えば、スタジアムの周辺に畑や工房を設け、緑豊かな里山の風景を再現するという構想があるそう。試合が開催されない日も人々が訪れ、憩いのひと時を楽しめるようにしたいと語りました。

まさに大きな夢と希望を秘めた、「里山スタジアム」。講演の終盤、岡田さんは、スタジアムを構想するにいたるまでの思いや、これまでの活動にかけた思いをこう語りました。「現在、我々は1100兆円を超える財政赤字や環境破壊、隣国との緊張関係など、深刻な問題に直面しています。私には、次世代に深刻な問題を残したまま死ねないという思いがあります。アメリカ・インディアンの言葉を借りると、地球は、先祖から譲り受けたものではなく、子孫から借りているもの。現在の社会には、生命をつなぐためでなく、自分のために生きている人が多くいますが、そうした社会の風潮を少しでも変えていきたいと考えています」


今回の基調講演では岡田さんの軽妙な語り口も際立ち、会場が大きな笑い声に包まれる場面も。また、岡田さんの講演内容から、自分自身の夢の思いを厚くした参加者の皆様もいるかもしれません。

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