シラバス

専門科目群/Social Issues(社会課題)領域

科目名 サスティナブル・ディベロップメント~将来世代に良好な環境をつなぐ~
講師名 早稲田大学社会科学総合学術院教授 黒川哲志
学期 春学期
曜日 土曜日
時間 13時~14時30分
日程 4月20日、4月27日、5月11日、5月18日、6月1日、6月15日、6月22日
※6月8日は休講となります(3/29更新)

講義概要

 SDGsによって持続可能な開発・発展という言葉が、社会に浸透してきた。
持続可能な発展は、元来、自然環境に関する世代間の衡平が中心にあった概念であったが、1992年の地球サミットでは先進国と途上国の利害を調整する言葉として機能し、SDGsでは社会的側面を強調する形で社会・経済・環境を統合する原理として用いられている。
本講義では、持続可能な発展の内容を歴史的に考察するとともに、気候変動・エネルギー問題や生物多様性保全を素材として考察する。

受講を通して得られるもの

-「サスティナブル・ディベロプメント」という概念の意義
-世代間衡平あるいは世代間倫理に関する考え方
-気候変動問題の構造
-エネルギー問題の構造
-生物多様性という考え方が自然保護法制に及ぼした影響

受講の際の注意事項

受講前に必要となる知識・準備 不要
グループワーク あり
課題 なし

各回の講義予定

テーマ
概要
第1回テーマ:サスティナブル・ディベロプメントの内容
元来は生態的に持続可能な発展であったのが、地球サミットで先進国と発展途上国間の利害調整の原理として用いられ、そしてSDGsでは社会・経済・環境を統合する原理へと変遷した「持続可能な発展」の歴史を振り返る。
第2回テーマ:持続可能な発展と気候変動問題
気候変動問題に取り組むことは将来世代への責任として理解されているが、国際社会では「共通だが差異ある責任」という考え方が受け入れられており、地球規模での気候変動問題での取り組みには困難が多い。
第3回テーマ:気候変動問題とエネルギー政策
気候変動を悪化させないためには二酸化炭素の排出を減らすことが求められている。化石燃料の使用を減らし、非化石エネルギーの利用の促進が必要であるが、再生可能エネルギーおよび原子力の利用の拡大は容易ではない。環境正義、気候正義、そしてエネルギー正義の観点から、気候変動とエネルギー政策を検証する。
第4回テーマ:持続可能な自然環境の保全と利用
生物多様性という概念を知ることによって、日本の自然環境保全は、ありふれた生態系にも価値を認め、農業や林業などによる持続可能な自然の利用とそれによって形成された二次的な自然の保全にも注力するようになった。
第5回テーマ:環境権と環境アセスメント
良好な環境を享受する権利である環境権の歴史と構造を検討し、将来世代の環境権を保護する仕組みについて考察する。また、環境権が、環境アセスメントなどを通じて実現されることを理解する。
第6回テーマ:持続可能な発展と資源循環
宇宙船地球号という言葉が象徴する資源の有限性を自覚し、資源の循環的な利用を実現するリサイクル制度について検討する。廃棄物法制とリサイクル法制の葛藤も学ぶ。
第7回テーマ:全体の復習
気候変動問題、生物多様性、そして資源循環の領域で現れた持続可能な発展に係る事柄を振り返り、持続可能な発展という概念の果たしている役割について理解を深める。

講師紹介

黒川哲志
早稲田大学社会科学総合学術院教授

早稲田大学社会科学総合学術院教授(2004年~現在)。
帝塚山大学専任講師・助教授(1994年から2003年)

主要業績
『環境行政の法理と手法』(2004年・成文堂)、『環境法のロジック』(共編著・2022年・成文堂)、『アメリカ気候変動法と政策』(共編著・2021年・勁草書房)、『環境法入門(第4版)』(共著・2020年・有斐閣)、『環境法のフロンティア』(共編著・2015年・成文堂)など