シラバス

専門科目群/Social Issues(社会課題)領域

科目名 日本の課題を読み抜く~個人はどう向き合うか~
講師名 小原 雅博(東京大学名誉教授)ほか
モデレーター/川上 達史(テンミニッツTV編集長)
学期 春学期、夏学期
曜日 土曜日(クラスワークの無い週)
時間 10時30分~12時00分
日程 【春学期】4月27日、5月18日、6月8日(補講日:6月22日)
【夏学期】7月13日、8月3日、9月14日(補講日:8月31日)
※講師都合により、第6回の講義は9月14日となります。

講義概要

 1話10分の動画で学ぶ教養講座・テンミニッツTV(運営:イマジニア株式会社)の講師陣が、それぞれの研究テーマにもとづき、日本が直面する課題について、対面講義で深く読み解いていきます。
 少子高齢化の進展、長期にわたるデフレと経済力の低下、厳しさを増す国際環境……。日本は文字通り「課題先進国」ですが、それゆえ、課題への向き合い方次第では、世界に先駆けて大きく貢献することができます。今回、本講で取り上げる諸課題は、本来、すべての日本人にとって「自分事」でなくてはならないものでしょう。
 しかし、正しく「自分事」として捉えるためには、問題の「本質」を理解する必要があります。「本質」を正しく理解するためには、各テーマについて「真のエキスパート」の話に触れることが肝要です。本科目では、問題の在り処を理解し、それぞれがその課題にどう向き合うのかを考えるきっかけを提供します。

受講を通して得られるもの

・日本が直面する各課題の「本質」がどこにあるかを理解します
・さまざまな「諸課題」を並列して学ぶことで、問題のありかを構造化して考えます
・さまざまな社会課題に自分自身がどう向き合うのかについての意識が変わります

受講の際の注意事項

受講前に必要となる知識・準備 不要
グループワーク なし
課題 なし
その他 ■各回の講師により、聞き手(モデレーター)付の講義、または講義形式の講義となります。(いずれも質疑応答はあります)
■本科目は1話10分の教養動画メディア・テンミニッツTV協力講座のため、録画のうえ、テンミニッツTVで後日配信されます。
■受講生個人が特定できるような構図での撮影は致しません。
■質疑応答部分を講義にて配信する場合についても、質問者個人が特定できるかたちには致しません(原則として質問の動画や音声は使いません⇒質問内容をテキスト表示にしてテンミニッツTVの該当動画講義にアップいたします)。

各回の講義予定

テーマ
概要
テーマ:国際紛争…何を考えるべきか、何ができるのか講師:小原 雅博
各地で起きる国際紛争。われわれはただ、国際ニュースを見守るだけになりがちです。市民の立場から、できることはあるのでしょうか。本講では、国際紛争が起きるメカニズムを解説しつつ、世界的に市民が果たしている役割について検討します。
テーマ:ヒトの性差とジェンダー論講師:長谷川 眞理子
ジェンダー論を考える場合、「生物としてのヒト」の性差について理解をしておかねば、まさに本末転倒です。「差別を恐れて差異を認めようとしないのでは、科学的に誠実ではない」。では、性差から見えてくるものとは。
テーマ:国と個人と中間集団…「独立」と「在野」を支えるもの講師:片山 杜秀
「お上としての国」vs「個々人」。本当にその構図だけでしょうか。個々人の「在野、独立、連帯」を担保するものこそ、分厚い「中間集団」でした。大学などのOB組織から各種の互助組織、圧力団体、地域団体まで、その本質と可能性を探ります。
テーマ:人口減少と社会保障…各国比較と課題と未来講師:森田 朗
人口の変化は、もっとも「確か」な未来予測であり、社会保障がどうなるかも設計できるはずですが、なかなか不安が払拭されません。各国の制度はどうなっているのか。日本の特徴と課題とは。いかに未来を切り拓けばいいか。問題提起します。
テーマ:第2の人生を明るくする労働市場改革…日本経済と雇用・労働問題講師:宮本 弘曉
高齢者や女性の労働条件がなかなか改善しないのは、そもそも戦後に確立した「日本的雇用慣行」が成立しないのに、その壁を乗り越えられていないから。それでは、どのようにすれば、多くの人がいきいきと働きやすい社会になるのでしょうか。
テーマ:水不足問題を考える講師:沖 大幹
地球規模の水循環と世界の水資源に関する最新の研究などをもとに、地球が抱える水不足問題の基礎を解説します。また、水不足問題について、地球規模の議論に加え、個人として何ができるのかも考えていきます。

講師紹介

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小原 雅博
東京大学名誉教授

1955年、徳島県生まれ。博士(国際関係学)。東京大学文学部卒、UCバークレーにて修士号取得。立命館大学より博士号(論文博士)を授与される。1980年に外務省に入り、アジア大洋州局審議官、在シドニー総領事、在上海総領事などを歴任した後、2015年より東京大学大学院法学政治学研究科教授を務め、2021年より同大学名誉教授。復旦大学(上海)客員教授、立命館アジア太平洋大学客員教授、名城大学特任教授、島根県立大学客員教授、藤田医科大学客員教授、四国大学特任教授も務める。
著書に『戦争と平和の国際政治』(ちくま新書)、『大学4年間の国際政治学が10時間でざっと学べる』(Kadokawa)、『日本の国益』(講談社現代新書)など。

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長谷川 眞理子
元総合研究大学院大学長/日本芸術文化振興会理事長

1952年生まれ、東京都出身。専攻は行動生態学、進化生物学。1976年、東京大学理学部(生物学科)卒業。1983年、東京大学大学院理学系研究科人類学専攻博士課程修了(理学博士)。1980年、国際協力事業団派遣専門家(タンザニア野生動物局)。東京大学理学部生物学科助手(人類学教室)、専修大学法学部教授、早稲田大学政治経済学部教授、総合研究大学院大学教授などを経て、2017年より総合研究大学院大学長。2023年、日本芸術文化振興会理事長。著書に『自然人類学者の目で見ると』(青土社)、『進化的人間考』(東京大学出版会)、『私が進化生物学者になった理由』(岩波現代文庫)など。

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片山 杜秀
慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家

1963年、宮城県生まれ。1986年3月、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1992年3月、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。1988年3月、明治大学大学院修士課程政治経済学研究科政治学修了。専攻領域は近代日本の思想と文化。著書に『音盤考現学』『音盤博物誌』(アルテス・パブリッシング。吉田秀和賞・サントリー学芸賞受賞)、『未完のファシズム』(新潮選書。司馬遼太郎賞受賞)、『大楽必易―わたくしの伊福部昭伝』(新潮社)、『歴史は予言する』(新潮新書)、『11人の考える日本人』(文春新書)、『尊王攘夷』(新潮選書)、『鬼子の歌―偏愛音楽的日本近現代史』(講談社)など。

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森田 朗
東京大学名誉教授/一般社団法人次世代基盤政策研究所所長・代表理事

1976年東京大学法学部卒業、東京大学助手、千葉大学法経学部助教授を経て、94年より東京大学大学院法学政治学研究科教授、2004年東京大学公共政策大学院教授・同大学院院長、12年より学習院大学法学部教授、東京大学名誉教授。14年国立社会保障・人口問題研究所所長。17年より津田塾大学総合政策学部教授(2021年3月まで)、18年より研究開発法人科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)センター長(非常勤)兼務(2021年3月まで)、2020年より一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI)代表理事。中医協前会長。著書に『現代の行政』(第一法規出版)、『日本の人口動向とこれからの社会』(東京大学出版会)など。

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宮本 弘曉
東京都立大学経済経営学部教授

1977年生まれ。東京都立大学経済経営学部教授。慶應義塾大学経済学部卒業、米国ウィスコンシン大学マディソン校にて経済学博士号取得(Ph.D.in Economics)。国際大学学長特別補佐・教授、東京大学公共政策大学院特任准教授、国際通貨基金(IMF)エコノミストを経て現職。専門は労働経済学、マクロ経済学、日本経済論。主な著書に、『101のデータで読む日本の未来』『51のデータが明かす日本経済の構造―物価高・低賃金の根本原因』(以上、PHP新書)、『日本の財政政策効果―高齢化・労働市場・ジェンダー平等』(日経BP)、『一人負けニッポンの勝機―世界インフレと日本の未来』(ウェッジ)など。

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沖 大幹
東京大学大学院工学系研究科教授

1964年生まれ、東京大学大学院工学系研究科修士課程修了、博士(工学)、気象予報士。専門は地球水循環システム、水循環モニタリング、水循環モデリング、水資源アセスメント。日本学士院学術奨励賞、日経地球環境技術賞、生態学琵琶湖賞など表彰多数。水文学分野で日本人初のアメリカ地球物理学連合フェロー。著書に、『水危機 ほんとうの話』(新潮選書。土木学会出版文化賞、水文・水資源学会学術出版賞受賞)、『知っておきたい水問題』(姜益俊氏とともに編著、九州大学出版会)、『水の未来―グローバルリスクと日本』(岩波新書)、など。

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川上 達史(モデレーター)
テンミニッツTV部長兼編集長(イマジニア株式会社)

1993年、中央大学法学部政治学科卒業後、PHP研究所に入社。月刊誌『Voice』副編集長、月刊誌『歴史街道』副編集長、PHP新書編集長などを歴任。2019年、イマジニア株式会社に入社、現職。