シラバス

専門科目群/Social Issues(社会課題)領域

科目名 日本の課題を読み抜く~個人はどう向き合うか~
講師名 中村彰彦(作家)ほか
モデレーター/川上達史(テンミニッツTV編集長)
年度 2025年
学期 春学期、夏学期
曜日 土曜日(クラスワークの無い週)
時間 10時30分~12時00分
日程 【春学期】4月26日、5月17日、6月14日(補講日:6月21日)
【夏学期】7月12日、8月2日、8月30日(補講日:9月13日)

講義概要

 1話10分の動画で学ぶ教養講座・テンミニッツTV(運営:イマジニア株式会社)の講師陣が、それぞれの専門テーマにもとづき、日本が直面する課題について、対面講義で深く読み解いていきます。
 日本の社会構造の大転換、ますます厳しさを増す国際環境、生成AIが変えていく社会と人間のあり方、社会とメンタルヘルスの問題……。日本は文字通り「課題先進国」ですが、それゆえ、課題への向き合い方次第では、世界に先駆けて大きく貢献することができます。今回、本講で取り上げる諸課題は、本来、すべての日本人にとって「自分事」でなくてはならないものでしょう。
 しかし、正しく「自分事」として捉え、「自分事」として行動していくためには、問題の「本質」を理解する必要があります。「本質」を正しく理解するためには、各テーマについて「真のエキスパート」の話に触れることが肝要です。本科目では、それぞれにテーマに深く迫り、それぞれがその課題にどう向き合うのかを考えるきっかけを提供します。

受講を通して得られるもの

・日本が直面する諸課題の「本質」がどこにあるかを理解します。
・さまざまな「諸課題」を並列して学ぶことで、問題のありかを構造化して考えます
・さまざまな社会課題に自分自身がどう向き合うのかについての意識が変わります

受講の際の注意事項

受講前に必要となる知識・準備 不要
グループワーク なし
課題 なし
その他 ■各回の講師により、聞き手(モデレーター)付の講義、または講義形式の講義となります。(いずれも質疑応答はあります)
■本科目は1話10分の教養動画メディア・テンミニッツTV協力講座のため、録画のうえ、テンミニッツTVで後日配信されます。
■受講生個人が特定できるような構図での撮影は致しません。
■質疑応答部分を講義にて配信する場合についても、質問者個人が特定できるかたちには致しません(原則として質問の動画や音声は使いません⇒質問内容をテキスト表示にしてテンミニッツTVの該当動画講義にアップいたします)。

各回の講義予定

テーマ
概要
第1回テーマ:歴史探索から考える…視点と分析講師:中村 彰彦
賢者は歴史から学ぶ…現代の諸問題を考えるとき、「歴史」から考えると、きわめて重要な示唆を得られます。さらに、現在の「常識」とは違った視点から歴史を探索することで、まったく新しい景色が見えてきて、より貴重なヒントも得られます。いかに史料を読み込み、いかに本質に迫るか。その方法論を具体的に明かします。
第2回テーマ:進化とは何か~イノベーション、社会、幸福講師:長谷川 眞理子
生物学から見ると、「進化とは、何か良くなるということではなく、多様性をつくって生き延びること」です。だとすると、われわれの「進化」への間違った認識が、社会の進歩やイノベーションについての考え方に大きな誤解を与えているのではないでしょうか。「進化とは何か」を掘り下げ、社会的な意味と意義を考えます。
第3回テーマ:集権と分権~日本のあるべき姿は?講師:片山 杜秀
歴史を考えると、日本人は基本的に中央集権を嫌うようにも見えます。古代の律令体制も長続きせず、集権的な豊臣政権よりも分権的な徳川政権が安定しました。明治維新後、日本は西洋に対抗すべく中央集権を選びますが、それがまた限界に来ているのかもしれません。本当の「この国のかたち」とはいかなるものかを考えます。
第4回テーマ:AI時代と人間の再定義講師:中島 隆博
生成AIが社会の随所に実装されています。AIが社会をどう変えるのか。人間はどうなるのか。あらためて「人間とはいかなる存在か」が問われます。たとえば「人間とは、Human Co-becomingである」「考えるとは、相手と脳を共有して一緒に考えることである」と考えたとき、どんなAI社会の未来図が見えてくるでしょうか?
第5回テーマ:平和の追求~平和をいかに実現するか?講師:川出 良枝
「平和」が世界各地で傷んでしまっている現在だからこそ、これまで「平和の実現」のためにどのようなことが考えられてきたのかを振り返り、そこから未来を考えていくことが重要です。本講では、ルソーやカントなどの先哲が、平和に向けてどのような構想を抱いたのかを検討し、現代の世界の課題や論点を考えていきます。
第6回テーマ:現代社会とメンタルヘルス講師:與那覇 潤
いま「生きづらさ」や「心のつらさ」を感じる人が多いのは、なぜなのでしょうか。心の問題を生み出してしまう日本社会の背景とはどのようなものか。自分のメンタルヘルスに向き合うとは。そして治療や支援にあたって大切なこととは。講師自身の病気と回復の体験を踏まえて、課題の本質に迫り、何ができるのかを考えます。

講師紹介

中村 彰彦の画像
中村 彰彦
作家

1949年栃木県生まれ。東北大学文学部卒。在学中に『風船ガムの海』で第34回文學界新人賞佳作入選。卒業後1973年~1991年文藝春秋に編集者として勤務。1987年『明治新選組』で第10回エンタテインメント小説大賞を受賞。1991年より執筆活動に専念する。1993年、『五左衛門坂の敵討』で第1回中山義秀文学賞を、1994年、『二つの山河』で第111回(1994年上半期)直木賞を、2005年に『落花は枝に還らずとも』で第24回新田次郎文学賞を、また2015年には第4回歴史時代作家クラブ賞実績功労賞を受賞する。
近著に『幸運な男 渋沢栄一人生録』(文春文庫)、『史談集 沖田総司は黒猫を見たか』(中央公論新社)、『孝明天皇毒殺説の真相に迫る』(中央公論新社)など。

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長谷川 眞理子
総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長

1952年生まれ、東京都出身。専攻は行動生態学、進化生物学。1976年、東京大学理学部(生物学科)卒業。1983年、東京大学大学院理学系研究科人類学専攻博士課程修了(理学博士)。1980年、国際協力事業団派遣専門家(タンザニア野生動物局)。東京大学理学部生物学科助手(人類学教室)、専修大学法学部教授、早稲田大学政治経済学部教授、総合研究大学院大学教授などを経て、2017年より総合研究大学院大学長。2023年、日本芸術文化振興会理事長。著書に『自然人類学者の目で見ると』(青土社)、『ヒトの原点を考える』(東京大学出版会)、『私が進化生物学者になった理由』(岩波現代文庫)など。

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片山 杜秀
慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家

1963年、宮城県生まれ。1986年3月、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1988年3月、明治大学大学院修士課程政治経済学研究科政治学修了。1992年3月、慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。専攻領域は近代日本の思想と文化。著書に『音盤考現学』『音盤博物誌』(アルテス・パブリッシング。吉田秀和賞・サントリー学芸賞受賞)、『未完のファシズム』(新潮選書。司馬遼太郎賞受賞)、『大楽必易―わたくしの伊福部昭伝』(新潮社)、『歴史は予言する』(新潮新書)、『11人の考える日本人』(文春新書)、『尊王攘夷』(新潮選書)、『鬼子の歌―偏愛音楽的日本近現代史』(講談社)など。

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中島 隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授

1964年生まれ。東京大学法学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科中国哲学専攻博士課程中途退学。中国哲学・世界哲学研究者。東京大学大学院総合文化研究科准教授、東京大学東洋文化研究所准教授を経て、2014年より東京大学東洋文化研究所教授。著書に、『共生のプラクシス―国家と宗教』(東京大学出版会、第25回和辻哲郎文化賞)、『人の資本主義』(東京大学出版会)、『中国哲学史』(中公新書)、『荘子の哲学』(講談社学術文庫)など。

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川出 良枝
東京大学大学院法学政治学研究科教授

1959年、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。パリ第七大学DEA課程修了。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。放送大学助教授、東京都立大学教授を経て、2005年より現職。
著書に、『貴族の徳、商業の精神』(東京大学出版会、1996)、『政治学(補訂版)』(共著、有斐閣、2011)、『西洋政治思想史:視座と論点』(共著、岩波書店、2012)、『平和の追求―18世紀フランスのコスモポリタニズム』(東京大学出版会、2023)など。

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與那覇 潤
評論家

1979年、神奈川県生まれ。2007年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。専門は日本近現代史。2007年から地方公立大学准教授として教鞭をとった後、病気離職。
著書に『翻訳の政治学』(岩波書店)、『帝国の残影』(NTT出版)、『中国化する日本』(文春文庫)、『日本人はなぜ存在するか』(集英社文庫)、『荒れ野の六十年』(勉誠出版)、『平成史』(文藝春秋)、『知性は死なない(増補版)』(文春文庫)、『危機のいま古典を読む』ほか多数。共著に『「日本史」の終わり』(PHP文庫)、『日本の起源』(太田出版)、『史論の復権』(新潮新書)、『教養としての文明論』(ビジネス社)ほか多数。
2020年、斎藤環氏との共著『心を病んだらいけないの?』(新潮選書)で小林秀雄賞。

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川上 達史(モデレーター)
テンミニッツTV部長兼編集長(イマジニア株式会社)

1993年、中央大学法学部政治学科卒業後、PHP研究所に入社。月刊誌『Voice』副編集長、月刊誌『歴史街道』副編集長、PHP新書編集長などを歴任。2019年、イマジニア株式会社に入社、現職。