戸塚 俊介(2023年度修了)
- 活動タイトル
- ようこそ「知」と「人」の豊かな「つながり」の場へ
2025.02.04

※LRC入学式の様子
2023年4月。LRC入学式に集う多彩な“新入生”たち。その熱気と個性豊かな先生たちの登場に私は強い期待感を抱きました。約40年の仕事期間を卒業した私には、当面3つの関心ごとがありました。
ひとつは「学び」の現状を知ること、二つ目は「アート」を人生に活かす方法を探ること、三つめは先人の戦争体験を次世代につなぐこと。わずか1年のLRC活動でしたが、これらへの第一歩が踏み出せたといえます。
まずは、「学び」の現状を知るための試み。そこには、私たちエルダー世代を含め多くの人が、真に学びたい場へたどりついていない状況、いわば「学び難民」の存在への問題意識がありました。まずはできる限りの学びの機会を体験し、それを比較検討すること。LRC入学の理由もそこにありました。ここを拠点として、東京都、区の生涯学習講座、民間の文化センター講座なども同時受講し、講師、カリキュラム、参加者層、受講の満足度などを比較していく中で、これからの望ましい学びの形態と課題についての多くの示唆を得ました。
二つ目は「アート」を人生に活かすための試み。豊かな人生を実現するために、アートを活用することですが、LRCの関連授業、オープンキャンパスの講座などはもちろん参考になりましたが、同時にすすめていた地域での実践で、関連NPOや、研究者、活動家との出会いにより、関心をもっていた対話型絵画鑑賞の最新の知見を得ることができました。これは、現在も地域での複数の美術館・資料館における支援活動へとつながっています。
三つ目は「戦争を語り継ぐ」ための試み。年々戦争を実体験した世代がいなくなり、語り継ぐ世代としての私たちの役割は高まっています。
まずは子、孫の世代へとバトンを渡さないといけない。そのためにも語り継ぐ「工夫」をしたい。私はまず、戦時中の「歌」に着目しました。特に当時戦意高揚のために国とマスコミが協力して国民から募った「公募国民歌」を取り上げ、これが日本の太平洋戦争期に、戦況と連動しながら盛衰していくさまを修論のテーマとしました。膨大な資料と格闘しつつも、担当教授のご指導によりなんとか仕上げることができました。今年は戦後80年の節目でもあり、地元の戦災記念館や地域の勉強会などで、戦時中の身近な生活文化を取り上げながら戦争を次世代へ語り継ぐ、新たな試みを実現したいと思っています。
そして今。私は次の新たなステップとして、教育現場に身をおき、高校のマネジメント支援員として、日々リアルな学校の姿を目にしています。これまで私は、LRCでの学びの実践の場を、「教育」「社会教育」の場へつなげたいという思いがありました。現場の先生たちの激務、頑張り、次世代の若者たちの限りない可能性、山積する課題をひしひしと感じつつ、私も日々学んでいます。
LRC入学式の時でしたか、ある先生が「セレンディピティ」という言葉を使われました。
“偶然の学びがもたらす豊かな洞察や示唆”とでもいいましょうか。この言葉は常に私の学びの根底にあります。LRCでの怒涛のような学びの連鎖のなかで、いままで実感できなかったことが偶然、「腑に落ちる」幸福な体験が確かにありました。そんな時、おそらく脳内では神経細胞が新たな「つながり」「回路」を形成しているのかもしれません。

※朗読サークル「Read Aloud」発表会にて
もちろん、つながりは脳内を飛び出し、人とのつながりも促進します。LRCに集う仲間はそれぞれが専門家であり、「知りたがり」の集まりでした。その仲間たちからの助言、示唆は、今も私の学びを継続する原動力となっています。LRCは仲間が相互に触発し・される場であり、探求心を高めるための強力な触媒でした。セレンディピティとはまさに、そうした豊饒な知の土壌を求めるものにこそ、偶然訪れてくれるのではないでしょうか。